モカジャバをジャバジャバ

世間の出来事のうちのごく一部について、周回遅れで書くブログです。基本的にはゲームのブログではあります。

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「カクヨム」で読んでみた。 SF編-2選

今週のお題ゴールデンウィーク2016」
という事で、皆様ゴールデンウィークをいかがお過ごしでしょうか。
私は、人生ではじめてweb小説という物に手を出しています。

これまでに数多の本を読み、趣味を尋ねられた時は当たり障りなく 「小説とか読むよ」 と答えて生きてきましたが、”小説家になろう”にも”アルファポリス”にもアクセスした事はありませんでした。
世には新刊既刊復刊数多の書物があり、本屋へ行くたびあれも読まねばこれも読まねばと思っていたので、敢えて本屋以外で本を探す必要性という物を感じた事が無かったのです。
そういう訳でweb小説という文化自体に物珍しさを感じつつ、さりとて事前に懸念していたほど居世界に転生した俺がなんとかかんとかという訳でもなく、何か普通に楽しんでいます。

以下、読んでみて面白かった物の感想など。

ネッ禁法時代:東京試炸例(トーキョー・バースト・プロトタイプ) 作者:吾奏伸(あそうしん)

AIとウェアラブルデバイスが実用化されるも一般人に普及する程ではなく、自動車の自動運転システムが試験段階で、ネット免許制が東京都だけに試験的に導入された世界を舞台とした、サスペンス調SF作品。

タイトルの ”ネッ禁法時代” というユルいワードと、 ”東京試炸例(トーキョー・バースト・プロトタイプ)” というちょっと堅めのワードが現す通り、カチッとしたSF風の体裁を保ちつつも読みやすい程度にユルい部分もあり、全体のテイストとしてはラノベより一般書籍寄り。
「近未来SFで、事件が起こって警察・政治・官僚が動きまわるけどドロドロはしておらず、中高生が出て来ない感じ」 と言われて、 『いいんじゃない?』 と思った方の暇つぶしには、概ねオススメできます。

文章や設定がしっかりしており、中高生向けの一人称俺作品とは一線を画しています。
極めて主観的な感想としては、都内のちょっと規模の大きな本屋の片隅、ハヤカワJA文庫かハヤカワMH文庫コーナーあたりで面陳になっていそうなレベルで、しかも何の気なしに買って読んで後悔はせず、後日知人に軽く話したら 「あ、それ私も読みましたよ」 なんて言われそうな雰囲気です。

凄く面白い!かと言えばそこまでではないものの、なんというか、読める。
それなり楽しく読める。

know (ハヤカワ文庫JA)

know (ハヤカワ文庫JA)

敢えて欠点を挙げるとすれば、京都出身標準語のサイバー系公務員青年主人公が、野崎まどの 「know」 を連想させる点と、ヒロインがあまりに人語を解さなさすぎて鬱陶しい点くらいか。特に後者はお転婆ヒロインの域を越えているように思われ、とにかくその女を殴って黙らせろとは2度ほど考えました。


この作品の面白いところは、内容自体もさることながらそのマーケティング手法でしょう。
ここまでこの記事を読んだ方は、もしかすると 「へーそんなweb小説があるのか。他の評判はどうなんだろう」 と思って作品名で検索してみるかも知れません。そうなると 『ネッ禁法時代が面白い!』 みたいなタイトルのブログ記事が引っかかる訳です。
で、多少なりとも話題になっていて、かつ評判が良いとなると、じゃあ悪評はないのかな?と、更に調べてみたくなる訳です。まあ、私は調べてみたくなりました。で、togetterで感想がまとめられているのを見付けます。

ほうほう、結構話題になっててまとめられてるくらいなのかー、と思ってよく見るとこれ、まとめてるのって作者さん本人なんですよね。そして発言者も、基本的には作者の知り合いというか元々のファンというか、よく知らずに敢えて言うなら身内的な様子です。
だからといって自演だどうだと言うつもりは毛頭ありませんし、作品を通して作者がコミュニケーションを楽しんでいるという事は当たり前かつ健全です。その上で、作品への導入方法として実に上手いと思います。実際、作品のクオリティも高いですしね。

妹、分裂する 作者:すぺあ

恐らくは遠い未来の事ではなく、ほぼ現代と同等の時代にある日本。何の変哲もない一般家庭で暮らす平凡な男子高校生の妹が、ある日を堺に2の2乗で増殖していくSF作品。

私は数学がまるで駄目なので、概要を見てまず安易に妹ハーレム物を想像してしまいました。
しかし、冷静になって考えると今日2人に分裂した妹は、来週には128人に増えています。そのまま日が経ち1ヶ月が過ぎた頃、妹は2,147,483,648人に増えており更に3日も経てば妹の総数が地球の総人口に並び立つのです。これはキャッキャウフフしている場合ではない。地球がヤバい奴だ。

そんな訳なので、社会的にも経済的にもそもそも地上の面積的にも既存の人類と妹が共存出来る訳もなく、ある時点で主人公は人類をとるか妹をとるかという選択を迫られる事になるのです。なんかこう、ファンタジー的な意味合いとして妹を生贄に捧げれば世界が救われる、とかそういうのじゃなくもっと逼迫した感じで。

そんな話が淡々とテンポ良く (何しろ今日大量にいる妹は、明日にはその2倍の数に増えるのだ) 進むため、あからさまに世界規模の危機が発生しつつも 「妹が増える」 という字面のためにシリアスな笑いがこみ上げてくる感じで、ショートショート的な風味すらあり非常に楽しい作品でした。
最後はスッと爽やかに終わる感じまで、徹底したショートショートSF風の味付けが心地よい。

また敢えて欠点をあげるとすれば、途中で作中の時間経過度合いと認識が合わなくなった事と、最後の解決が 「そんな簡単に決まるかいな」 というところくらいでしょうか。
その辺りを差し引いても、ネタと勢いが実に素晴らしく、読後はなんかしてやられたような満足感があります。


以上、カクヨムで読んでみた。でした。
ゴールデンウィーク終盤の暇つぶしの参考になれば。