入門用おすすめエピソード5 (私選) #njslyr
以前、私的にまとめた物です。
昨今、web上のあちこちで忍殺語と呼ばれる特殊な言い回しを見かける機会も増えて参りましたので、これを機に原典的な用法を体感する事によってより深く各語を楽しむ助けになるかも知れない、という事で、今更感もありますが公開します。 (加筆修正)
ニンジャスレイヤーって何だ
@NJSLYRのアカウントがtwitter上で翻訳、連載しているweb小説のようなものです。
内容としては、間違った日本観と、excite翻訳直訳に三ひねりくらい加えたような造語が妙なスピード感を醸し出しながら、ニンジャが出てカラテで殺す感じのサイバーパンクSF風小説です。
大体においては 「考えるな、感じろ」 の領域にあり、その中で理知的な考察を繰り返す方々も居られますが、作品のファンはひとまとめに ”ニンジャヘッズ” または略して ”ヘッズ” と呼ばれます。
”アイエエエ”、 ”ドーモ、●●サン”、 ”慈悲はない”、 ”ニンジャが出て殺す”、などは作品や公式発表の中で用いられた言葉で、この独特な言い回しは 「忍殺語」 と呼ばれたり呼ばれなかったりします。
どこかで見かけた事のある方も居られるのではないでしょうか。
各エピソードの読み方
ニンジャスレイヤーのtwitter上での連載は3年だか5年だかに及んでいますので、公開済みのエピソードは膨大な数にのぼっており、気がつけば第三部の連載やってる有り様です。
ですが、最初から読む必要はありません。
各話は、公開者 (@NJSLYR) によって意図的にカットアップされており、読者はそれぞれのエピソードをぶっつけ本番で楽しむことが出来ます。連作短篇集みたいなもんです。
公式の以下の発言をご参照のうえ、安心してまずは読んでみてはいかがでしょうか。
第一部おすすめエピソード
連載中のエピソードを含め、全ての作品*1はweb上で閲覧が可能です。
ネオサイタマ電脳IRC空間 (http://d.hatena.ne.jp/NinjaHeads/) にて公開中です。
ただまあ、いくら 「最初から読む必要はない」 「どこから読んでも楽しめる」 とはいえ、何か色々面倒かと思いますので、個人的なお気に入りエピソードの中から入門編に良さそうな気がする物を、第1部 「ネオサイタマ炎上/Neo-Saitama in Flames」 の中から適当にチョイスしてみます。
(二部以降は読んでないエピソードが結構あるため)
- 「ゼロ・トレラント・サンスイ」 (http://togetter.com/li/75597)
記念すべき連載第一話。世界観とバトルシーンが格好良い。
所々になんかおかしな文章 (ニンジャアトモスフィア的な) が散見されますが、全体的には薄味で、短いストーリーながら世界観を十分に感じることのできる良いエピソードだと思っています。
まず初めに読むと、小手調べになるんじゃないでしょうか。
※いきなり話の途中から始まりますが、これは前述のカットアップによるものなので気にしない - 「レイジ・アゲンスト・トーフ (2) : バックストリート・ニンジャ」 (http://togetter.com/li/72554)
タイトルにトーフって……と、半笑いで読み始めて頂ければ。
開幕 「ワッショイ!」 からの無駄すぎる緊張感に満ちたアイサツ、「イヤーッ!」「グワーッ!」、おざなりな戦闘シーン、そして爆死と、ニンジャアトモスフィアの7割くらいが短いエピソードの中に凝縮され、それらが息つく間もなく押し寄せます。初見殺しの良いエピソードだと思っています。
ここまで読んで 「ちょっと無理です」 とか思ったら引き返した方が良い気もします。
※このエピソードは ”レイジ・アゲンスト・トーフ” の長いエピソードのうちの一部で、その中の二番目のエピソードにあたります。前後の話が気になった方はそちらもどうぞ - 「ワン・ミニット・ビフォア・ザ・タヌキ」 (http://togetter.com/li/78144)
タヌキって……とか再び半笑いで読み始めて頂ければと思います。
重要人物であるナンシー・リーが登場し、割と重要なガジェットであるコトダマ空間重点のエピソードです。IRC、スゴイ級ハッカー (ただし格付けはタイピング速度によって決まる) などの笑いどころから、これぞサイバーパンクと思わず唸ってしまうサイバースペースの描写など、見どころ満載。#1~#7までのシリーズに分かれており少し長い話となりますが、#2冒頭のダイダロス=サンのハッキングシーンはマジで格好良いです。
ただ、コトダマ空間の登場によりなんか概念がややこしくなってくるので、サイバーパンク的なストーリーに耐性がないと振り落とされるかも知れません。
※ナンシー・リーの初出はこれ以前のエピソードなのですが細かい事は気にしない - 「スシ・ナイト・アット・ザ・バリケード」 (http://togetter.com/li/77689)
トーフとタヌキに比べればスシは大分ましに思えますが、語数が増えたせいでタイトルの意味不明さ加減が加速します。半笑いと諦念をもって読み始めて頂ければ。
タイトルはふざけていますが、内容は大真面目に秀逸。特に、皮肉をたたえた厭世観溢れる雰囲気をハードボイルド的、かつシンプルに描き切った冒頭文は双葉十三郎訳のチャンドラーに迫る、とか言っても過言ではないかも。そこへ無慈悲かつ無機質に事件を降って来させたセンスには完全に脱帽です。とにかく冒頭文が無茶苦茶格好良い。
そして、あらゆるニュアンスの 「アイエエエ」 がこれでもかとばかりに乱れ飛びます。
ご堪能下さい。 - 「キルゾーン・スモトリ」 (http://togetter.com/li/77433)
ここまで、この記事もしくはリンク先の作品を読んで疲れた方が安心して読めるエピソードです。
タイトルが既にヤバいんですが内容は何かもうとにかくヤバいです。
サラリマン、カチグミ、バイオ・スモトリ、実際安い、ユウジョウ!
紹介順としては最後になりますが、個人的には、ニンジャスレイヤーを紹介しようとするとき、このエピソードは決して欠かすことのできないものであると考えています。
終わりに
突然の青春物語あり、ハードボイルドあり、ホームドラマあり、階級闘争あり、ゴリゴリのサイバーパンクありと、エピソードによって様々なテイストを味わえますので、ここまでに書いたようなものが全てでは無いことをご留意ください。
さて、いかがでしたでしょうか。
個人的な見解ですが、ニンジャスレイヤーを読む時は正々堂々と笑うものだと思っています。
twitterなんかで感想を見ると、誰一人として 「バカじゃねーのこれwww」 とか言っていないため、面食らう人も居るかも知れません。ですが、ニンジャスレイヤーはもう全然笑って大丈夫だと思います。だってどう考えてもおかしいもん。
「だんだんとワシの堪忍袋が暖まってきたぞオムラ=サン」 ってあっためるもんなのかよwwwwフロアも大分いい感じに温まってきましたwwみたいなwwwwwwねーよwww何言ってんだこいつwwwww
とか今でも思います。
真面目くさって忍殺語による高等会話を繰り広げるヘッズ達だって、初めて読んだ時はみんな大草原不可避 (とかいう表現が使われるようになったのは最近ですが) だったハズです。
彼らヘッズ達は、忍殺の間断なきボケの波状攻撃に屈してツッコミを止めてゼンを極め、ニンジャアトモスフィアに身を委ねる事を選んだけなのです。笑うと寿命が伸びます。
最後に、ここまで読んでみたうえで忍殺の世界をより深く知りたい、とか思ってしまった奇特な方のためにあと二つほどエピソードを紹介して終わりにしようかと思います。良い週末を。
- 「メナス・オブ・ダークニンジャ」 (http://togetter.com/li/75606)
主人公・ニンジャスレイヤーの正体であるフジキド・ケンジその人が、一体どういう人物でどういう経緯で戦いに身を置くのか。また、フジキド・ケンジを取り巻く人間とはどういう人物なのかを押さえておけるエピソードです。 (フジキド=サンの来歴についてはもう少し詳しく書かれたエピソードがあった気がするんですがどれか分からなくなったので割愛) - 「ネオヤクザ・フォー・セール」 (http://togetter.com/li/73449)
ソウカイヤシンジゲート、ラオモト・カン、ヨロシサン製薬、そしてクローンヤクザなどの悪役が魅力的に描かれたエピソードです。企業による圧政状態など、フジキド=サンが戦う相手である世界観をよく知る事ができるでしょう。
ニンジャスレイヤーを楽しむ上で欠かすことの出来ない失禁も。
改めて幾つか読みなおしてみると、序盤のエピソード4つが導入として凄く優秀で、かなり細かく計算されて作られているんだなあと感心します。
そして 「ネオサイタマ炎上」 って ”ネオ” ”サイタマ” ”炎上” と区切って考えても、 ”ネオサイタマ” ”炎上” としても、どこをどうやっても突っ込みどころしか無いのが本当にスゴイと思います。実際スゴイ。
- 作者: ブラッドレー・ボンド,フィリップ・N・モーゼズ,本兌有,杉ライカ
- 出版社/メーカー: エンターブレイン
- 発売日: 2012/09/29
- メディア: 単行本
- 購入: 40人 クリック: 2,071回
- この商品を含むブログ (78件) を見る
*1:マンガ版とかドラマCD版はweb上で楽しむ事ができないものもある……かも?