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モカジャバをジャバジャバ

世間の出来事のうちのごく一部について、周回遅れで書くブログです。基本的にはゲームのブログではあります。

記事カテゴリから、ゲームタイトル毎の投稿を絞り込む事ができます。
基本的にはネタバレを気にしていませんので、その辺りが気になる方の閲覧はお勧めいたしかねます。
また、記事内にいい加減なCSSを使用する場合がございますので、パソコン以外からの閲覧もあまり得策とは思えません。

書き出しはどの一日からでもかまわない。 (皆勤の徒 感想)

酉島伝法、皆勤の徒を読み終わる。
何だか凄い小説だった。

皆勤の徒 (創元日本SF叢書)

皆勤の徒 (創元日本SF叢書)

四編の短編がおさめられて居るのだが、すべて基本的には同じ構成だ。
 ファッ…? → なるほど分からん? → 盛り上がって来た → 世界滅んだ
いわゆる、起承転結という奴である。
これを4回繰り返す。
ただし、その内容は極めて酉島伝法流であり、繰り返しの中で読者を退屈させる事はない。


追記:三ヶ月の間に4回くらい読み返して、更にまた何か書いた記事は こちら
三ヶ月かけてようやく、大事なところに辿りつけた気がします。


・皆勤の徒
表題作。
第二章で解体者の視点を得てからの収束感が快感。
壮大なクライマックスに置いてけぼりを喰らい、ただ塵埃の中で呆然と立ち尽くす。

・洞の街

土師部が社で暮らすようになったあたりからようやく話に着いて行けるようになる。
世界観的に「新世界より」を思い出す。
学園モノ風の書き出しから、土師部が学ランを着用しているようなイメージを抱くが、徐々に袴土師部のイメージが定着してくる。
土師部が街の中で疎まれていく辺りでは、うっすら共感を覚えるほどなので、何だかほっとする。
ユートピア的な計画が明るみになるにつれて物語が動き出し、もうあとは流れに身を任せられるようになる。
エジョクの中から立ち上がる四体の社長の姿に思わず納期を心配する。
社之長→社長かと思いきや。

・泥海の浮き城
出だしの意味不明度合いでは最強。
そろそろこの世界観にも慣れてきたと油断するものの側頭部を穿孔機で抉る勢いだった。
分かってくると、ハードボイルド(虫)探偵物語風であり、ちょっとマリード・オードラーンあたりを思い出す。
主人公がいつものように法的に極めてグレーで危険な仕事を引き受けて珍しくそれをしくじり、路地裏に転がるところから話が始まり、大きな陰謀に巻き込まれ、危険なエロスとドラッグの禁断症状と自棄酒を経て、最後には大きな謎を暴く。…こう書くと、まるでハードボイルドな市立探偵小説に必要な要素をすべて揃えているかのような充実ぶりと完成度である。
最後にはお父さんマインドに目覚めてエピローグで妻子のために人権問題と戦うようになるハートフル要素のおまけ付き。
ぷっくりと膨れ上がって床につくほどの腹尻を想像して鬱。

・百々似小隊
待ちに待った、世界の全貌が明らかになるパート。
外回りの脅威再び。
宇毬が白銀色の両足を得て再生する部分が凄く清々しい。
褐色肌の貧弱な小娘に銀色の義足。いいんじゃないでしょうか。いいんじゃないでしょうか。
彼女はワンピースを着てるんじゃないでしょうか。きっとそうに違いない。白い歯がきらめく。
宇毬ちゃんがどん底の時は彼女の視点で物語が書かれているが、彼女が再生していくにつれて物語の視点がどんどん遠ざかり、ラストシーンでは一瞬の邂逅だけに留めるというのはなんだか、くどくどと女の子をいじめる話よりも面白い気がしました。
少しだけラブラック=ベルあたりを思い出す。

酉島伝法という作家さんに興味を持って、彼のブログをはじめて読んでみた時に私が抱いた印象というのは 「なんだか言葉遊びが面白くて世界観が独特で、おもしろおかしい話を書くひとだなあ」 という程度の物だったんです。
その後なかなか、本書を買いに行くだけの時間が作れず、web上で立ち読みしてみた時は 「なんだかブログよりよりSFっぽいし、これは難しそうだけど読めそうだな」 とか思ったものです。
そんな軽い気持ちで読み始めたら、立ち読みしたはずの文章がどこにも見当たらないので随分と驚きました。冒頭から、社長のぶよんとした腕に正面から腹をしたたかぶん殴られて、そのアメーバ状の物体が打撃面にまんべんなく伝えてくる衝撃を余すことなく受けてさまざまな臓器をぐちゃぐちゃに壊す羽目になりました。

いい意味で立ち読みに騙されましたよ。

解説を読んでからもう一度じっくり読むと、今度は普通のSFとして楽しめました。
とはいえ、やはり多少の努力は必要になってしまいますが。